「違ったんだよ。“英雄”(ヒーロー)じゃ無いんだ。」
 ポゴはそのカツラをごんぞに渡す。ごんぞはがっくりと膝を折り、崩れ落ちた。

「…て、言うことは、“審査会議”になっちまうのか!」

「このままじゃね。」
 ポゴはごんぞに背を向け淡々と話す

「英雄(ヒーロー)どころの騒ぎじゃねーな、そんなんじゃ。」
 ごんぞが頭をたれ地面を見据える、そしてアスファルトに拳を叩きつけた。硬いアスファルトが弾け飛んだ。

「ごんぞだけの、せいじゃないよ。僕も付いていたんだから。」

 そのポゴの言葉にごんぞは、頭を上げる。
「ポゴ!お前。」

「大体“英雄”(ヒーロー)の顔とか分かってるのって、僕らだけじゃん。本部に写真送ったりした?送ってないだろ。」

「確かに…俺が送った情報は、“金髪の変な奴”ってだけだが。」
 ごんぞは、事態が飲み込めず、ポゴに喰いよる。

「そう言う事さ、僕達二人だけなんだよ。本当の“英雄”(ヒーロー)知ってるの。だからさ“こいつ”を英雄(ヒーロー)に仕立てるんだよ。」

「あ!でも…そんなの、巧く行くのかよ。」
 ごんぞは不安そうに訊ねた。

「あんた、気が小さいね。いっつもは、『俺様は、“スーパーヒーロー”だ!』なんて言ってるくせに。」

 その言葉に、ごんぞの魂が揺さ振られる。

「そう、俺様は、スーパーヒーロー!」
 ごんぞは、自分に言い聞かせるように呟く。

「もしばれても、殺人罪よりは、罪は軽い。」

「そう言や、そうだ。」
 ごんぞの不安が見る見る薄れていった。

「だな!そうと決まれば、善は急げだ。」
 言って立ち上がり、握っていたカツラを、ポケットにねじ込んだ

「まったく、人騒がせな奴だよ。」
 そしてヨッタの亡骸(むくろ)を肩に担ぎ、歩きだす。