朝の気持ちの良い太陽が照らす工業地帯。

 その一角に“何出弥(なんでや)製作所”があった。


「ういっす。貴ボン。」

「おうヨッタ、お早よー。」

 その工場内、のほほんと会話を進める二人がいる。


 黒髪にツンツン頭、アライグマそっくりな方がヨッタ。


 そして金髪のスーパーリーゼント、見た目タコの様な男が貴ボンだ。


「ふあー眠いなー。」
 ヨッタが大欠伸(あくび)をかく。

「ヨッタちやん、また徹夜だべ?ゲームか…」
 貴ボンはさめた視線を、ヨッタに送る。

「うん、あと少しでクリアーなんだよね。」


 ヨッタは、昨晩話題の新作ゲーム“ガリガリマン7”を、朝四時までやっていたのだ。

 そう彼はゲーム大好き・特撮ヒーロー大好きのオタクであった。


「馬鹿だなヨッタちやんは、ゲームばっかやってると頭に悪いぜ。」

「貴ボンにだけは言われたくないね。ギャンブルしか頭にない奴には。」

「げへへ…俺の『左右の目』は一発逆転だかんな。」

「…座右の銘(ざゆうのめい)だろ。」
 ヨッタがツッコんだ。

「まったく、ギャンブラーの典型じゃんか、一発逆転ってて言っても、トータルでいったら大負けなんだろ。」

「ま…まあな。だがよ、それを取り返すチャンスが現れたんだよ。」
 不気味な笑みを浮かべ貴ボンは笑う。

「何言ってんのさ、そんな旨い話…あ!新手の詐欺(さぎ)にあったんだろ?」

 訝し(いぶかし)がるヨッタをよそに、貴ボンは、ヨッタに肩を組んでくると、耳元に囁いた(ささやいた)。

「聞きてーべ?」

「…別に。」
 だが、ヨッタはあっさりと断る。