「まだ、こんなに小さいのに…」

飛鳥は、美香の頭に顔を埋めた。

「私も、お母さんに…お母さんに会いたい…っ」

ふわり…。

何かが、飛鳥の体に被さった。

「…神田、さん?」

零都からは、ムスクの香りが漂う。
温もりが、背中を伝わってくる。

「…母さん、いないんだ?飛鳥…」

飛鳥の鼓動が大きく鳴った。
“飛鳥”…。

「ねぇ、お姉ちゃん。美香、あこに入ってなきゃいけないんだよね…。帰るよ」

美香が、飛鳥を見てニッコリ笑った。

「え…?」

飛鳥がキョトンとしていると、美香は満面の笑みを浮かべる。

「だって、地獄に落ちちゃうもん」

最後に、美香は小さく小さく呟いた。

「…お姉ちゃんは、お母さんに似てる」

その声は、割れた窓から入ってくる風に消えていった。