【完】霞む夏空と光

 即答だった。人生で誰かに返した返事の中で、最も早かったかも知れない。



「頼む!できないと死ぬ!」



 大げさだ。花火が出来ないと死ぬだなんて、そんなはずあるか。それなら私だって、花火が上がると死ぬではないか。



「…はいはい。あっちの方でやってね」



 少し離れた石畳を指さし、私は言う。近くで火を点けたら一発殴ってやろう。



「よっしゃぁ!」



 歓声を上げるのを見て、私はそれはもうデラックス級の溜息を吐く。何だか疲れが溜まったよう。


 まさか、次に更なる疲れを呼ぶ声が、聞こえてくるとは。



―――――「大変お騒がせして申し訳ありませんが、花火の中止はなしということで、これより花火を――」



 これは。これは夢だ。



「えーーーー!!」


「やりぃぃぃぃ!」



 正反対の反応が、花火への想いを語る。もう私は涙目だ。


 私はかっとなって啓助に言う。八つ当たりだ?そんなの構っていられようか。



「じゃぁその花火しまってよ!」


「やだ。勿体ねぇじゃん」