【完】霞む夏空と光

「もう時間―――」



 どうやらもう花火が始まる時間。しかし、一発目は打ち上がる様子がない。



―――――「誠に申し訳ありませんが、本日の花火は中止とさせていただきます――」



 丁度その時、こんなアナウンスが入って。あまりにぴったりなタイミングに、笑いそうになってしまったのはここだけの話。



「えぇぇぇ!??」



 酷くショックを受けた様子の啓助と反対に、私の顔は満面の笑みを浮かべる。


 霞むことなく私の目に届こうとする星を期待し、また空を見上げた。



「これ見よがしに幸せそうな顔してくれるよな」


「え?嬉しいもん」



 ゆっくりと星が見られる安堵と喜び。しかしそれを味わえたのは、ほんの数秒。


 啓助が、申し訳無さそうな目で私を見る。言いたいことは大体想像できている。幼馴染とは怖いもの。



「ごめん相」



 断りたい。早く断りたいから早く言え。



「花火させて」


「やだ」