それでも毎年、私は花火大会に行っている。それは決して、私の意に沿ったことではない。


 理由は他でもなく。



「ま、諦めろ。恒例行事だから」



 ここだけは誤解しないで頂きたい。私は、嫌なのだ。公園に着いた傍から、帰りたいのだ。


 出来ることなら、最初から断りたい。それを親に言い出せないのは、物心つく前からの、家族同士の年中行事であるから。


 啓助の親も花火が好きらしく、普段はいい人たちなのだけど、そこだけは恨めしく思う。



「相はガキの頃から変わんねぇなー」



 どこか懐かしむように言った啓助を無視し、荷物の入ったバッグに、私は手を掛ける。何かあっては行けないから、手ぶらでは出られない性格なのだ。



「うるさい花火好き」



 花火好きという点を抜けば、こやつもなかなかいい奴なのだけど。


 ―――彼は、隣人であり幼馴染の啓助。見た目から入ると、短髪高身長、いつも笑顔。見慣れてしまったため、あまりあげるべき特徴というものが浮かばない。


 とにかく花火が好き。大学では花火に関して研究をしたいと、以前言っていた。どうやらその希望は未だ消えないらしい。やめてくれ。