センセイは白衣のポケットから実験用のゴムボールを出して、それを浮かれ気分の男子に投げた。 夏の日射しで暑くなった教室の中を、黒いゴムボールが何度か行き交って。 視界に楽しそうな雰囲気がくり返し横切ると、私の身体には不思議と力が入った。 みんなの笑い声と、センセイの笑顔。 羨ましいのか悔しいのか。抑えられない気持ちが私の胸を締め付ける。 だって私には、そんなことできないから。 授業中にセンセイに話しかけるなんて、たとえばそれが物理に関する質問だったとしても 私にはそんな勇気なんて…