センセイ




やがて再び開かれる物理準備室の扉。

私の鼓動が大きくなるのと同時に、センセイの足音は少しずつ近づいてきた。



ドクン、ドクン

ドクン、ドクン



どんなに深呼吸をしても、この気持ちは落ち着かない。

この想いは、もう止められない。



「……、平山?」



たたずんでた私を見つけたセンセイは、その目を一度大きく開いて

それからまた、いつもの優しい表情へとその視線を変える。

私の存在に、絶対驚いて迷惑してるはずなのに、そんな素振りも見せないで、センセイは「いい先生」を身体全体で表現する。



「どうしたー?ははっ、物理の課題にわからないところでもあったか」

「……」



ずるいセンセイ。

ひどいセンセイ。

本当は、私に言いたい文句がたくさんあるくせに。

私のことなんて、今すぐここから追い出して、もう関係ない振りをしたいくらいに邪魔に思ってるくせに。