だけど、そんなある日。
「順平。もぉ美樹に構わなくて良いよ。」
「え?」
いつものように、一緒に帰ってるときの事だった。
「美樹、今好きな人いるんだ。順平を好きって疑われたら嫌だし。」
「何…ソレ。美樹の好きな人って誰?」
「…大橋先生ッ」
美樹の口からでてきたのは、担任の美形の先生の名前。
「先生?無理にきまってるじゃん。歳がはなれすぎだよ。」
「良いのっ!とりあえず、美樹に構わないでね。」
そう言って、走り去った美樹の背中。
美樹は泣いていた。
俺はそんなに邪魔だったようだ。
自分の気持ちに気がついた瞬間の失恋だった。
高校に入って、俺は美樹以外の奴に惹かれた。
一目惚れだった。
同じクラスの相馬達也。
人目を惹く顔立ちをしていた。
肌も女子みたいに綺麗で、ワックスで盛った茶髪の髪は、柔らかそうで俺の頬を赤くさせた。
「なぁ…、木下だっけか?」
「えっ、あ。うん。」
不意打ちだった。
前の席だった相馬達也は、授業中、急にふりむいて俺の目を見据えた。
誰とも話さない、暗そうな相馬。
そんな相馬の声を、まともに聞いたのは俺が初めてだったんじゃないか?
「消しゴム借りる。」
「は?」
それは、貸してではなく借りるだった。
俺に拒否権はないようだ。
その日から、俺と相馬は仲良くなった。
