「加川」

「はい」

ざわめく教室に自分の名字が呼ばれ、無意識にそれに反応する。

誰も先生の話を聞かない。


愛莉はずっと
最近付き合い始めた
彼氏の話しをして

智子は片思いの
相手の話しをする。


あたしはそれに
タイミングよく
相づちをして
話しが途切れないように
気を配ってた。


先生からうちらは
見える範囲にあるはず。


真ん中の列の
ちょっと後ろ。

あたしらからは
先生の少しハゲて、
脂でテカる顔が
よく見える位置。


2人が大声で話していても
先生は注意しないで
点呼を進めていた。


「内等」

「お-」

「中川」

「はいよ」


中川くん…

「新田」

「おはようございますっ!」


中川くん、
おはよ