『運命の赤い糸』


 カツオとの出会いはごく普通のひどくありきたりな合コンだった。

「マジでー!?マジで名字花沢さんなのー?」
「はっはっは。そうよ、笑うがいいわ!しかも実家は不動産屋よ!」
「スゲー!俺、名前カツオで父ちゃんリーマンなんだけどー!俺たち超サザエさんじゃね?マジでこれ運命だって!みなさーん!今から花沢さんとカツオが付き合いますよー!」
「あっはっは!なにそのノリー!」


 あれから1年。出来るならあの日をなかった事にしたいと思っている。


「カツオ、今月の家賃半分払ってよ」
 身支度を整え、カレンダーをチェックする。様々な予定が書き込まれたそこに赤い字で書き込まれた家賃引き落としの日を確認をしてカツオに声をかけると、彼はテレビゲームから目を離すことなく返事をした。
「うーん、バイト代入ったらねー」
「そんなこと行って先月も貰ってないんだけど?」
「そうだっけー?」

 派手すぎない色の口紅をひき、襟元を整えながらカツオに目をやる。

「今日はバイト入ってるの?」
「うん」

 生返事ともとれる短い言葉を発したその口許は半分開き、Tシャツにトランクスという姿のカツオ。口紅を引くこともなければ正す襟もない。

 私は黒のパンプスに足を入れる。カッ、と鋭い音を立てて、地面を蹴り、小さく溜め息をついた。

「…ったくもう」

 私はそれ以上の会話を避け、部屋のドアを閉めた。

 あの日から私の部屋に転がり込んできた2歳下のカツオは我が物顔で気ままに暮らしている。半分払うと約束した家賃を踏み倒し、段ボール一箱分はあろうゲームを持ち込み、呑気にバイトをして、友達と呑み、夜遅くに帰ってきては「はなざわさぁーん、ただいまー」と私を起こす。迷惑だ。実に迷惑だ。