1時間目終了後、教室内は一気に騒々しくなった。情報屋コマキがB4サイズの紙に手書きで書いた号外を持ち、学校中を駆けめぐったからだ。
 号外のネタは、なんと!勇太のブログが公開される事になったこと。朝、勇太の追っかけをしていた女子達に向かって私が言った事が、早くもコマキの耳に入ったらしい。
(さっすがコマキちゃん。情報つかむの早いねー!)
台風のごとく教室に来て、号外ネタを披露し、去っていった彼女。そんな彼女の姿を思い返し、感心した。
(そして相変わらず仕事早いよね!)
号外ネタを披露しつつも私の姿を見つけたコマキは、『明日か明後日、取材に行くから!』と言った。10分休憩を使っての慌ただしい告知だったのに、取材のアポまで取ったのだ。すごい仕事力である。
 コマキの行動力に元気をもらった私は、気合いを入れ直しデジカメ片手に意気揚々と席を立った。
(もう妄想に負けません。がんばります!果敢に攻めます!)
麗の氷のような視線だって気にしない。私はどこまでも勇太の後をついて歩いた。授業の移動はもちろん、トイレへ行くと言えば入り口前まで行き、昼食のパンを買うと言えば待つのに時間がかかるかもしれないので、その後どこでも一緒に食べれるようお弁当を持って着いて行った。そして実際一緒に食べ、彼が食べている姿をカメラで写しもした。お弁当の味は緊張のあまり、ほとんどわからなかったが。
(ウフフ、役得役得!ハッキリ言って、くっついて歩くのはみんなから豪雨のように嫉妬の視線を浴びるし、密着取材について色々内容を聞かれるから説明するのがめんどうくさいけど、誰よりも早く勇太君の情報を知ることができるから嬉しい)
デジカメを操作し、撮った写真を見ながら思う。
 どの勇太もとても魅力的だった。