翌朝。私は鼻息も荒く登校した。
(よーし、今日から早速野望を達成するためガンバルぞ。ファイ、オーッ!)
駐輪場に自転車を止めると、一人心の中で言った。すると、かすかに残っていた恐怖心さえ吹っ飛んだ。
「おっはよー!」
元気よく挨拶をして教室に入れば、私のやる気が伝わったかのように、ほとんどのクラスメイトが挨拶を返してくれた。ますますやる気はアップした。
 そんな中、微妙な反応が一人。無視が一人。微妙な反応…チラリと見てチョコンと頭を下げたのは、勇太。無視したのは、もちろん麗。小説と思われる単行本を読み、私を見ようともしない。
(わかってはいたけど、ヘコむなー。でも、負けないぞ。必ず愛も友情も手に入れるんだ!)
私は胸を張ると大きく深呼吸し、麗の目の前に立った。するとクラスメイトが心配そうな目で見た。
 麗はようやく顔を上げた。とたん、私はひどくショックを受けた。
―彼女の目が、氷のようにつめたかったから。―
「何?」
「いや、その…」
「用がないなら、話しかけないで」
それだけ言うと、麗は再び本へ視線を落とした。『二度と話しかけないで』のオーラをまといながら。私は何も言えず、すごすごと自分の席へ向かった。
(麗の声、視線と同じくらい冷たかった)
頭の中に鮮明に浮かぶ彼女の視線。なかなか消せない。
(…なんか、氷水を頭から浴びせられたみたい)
ため息と共に椅子へ腰を下ろせば、うなだれて机を見つめた。カバンをおろすのも忘れて。
(想像以上に手強いな)
厳しい現実に、意気消沈する。