わが校の体育館はそれほど広くないので、4つの部が4分の1ずつシェアしていた。わがバドミントン部、バレー部、バスケット部と、卓球部だ。どこの部も男女入り交じっており、けっこうな人数がいたが、皆不満も言わず楽しくやっていた。
 しかし、今日はソレが恨めに出ていた。四つの部合わせて100人以上の女子生徒の目が、私と勇太に注がれている。勇太には熱い視線が、私には邪魔者を見る視線が。
(居心地、チョー悪いなぁ。世話係、やっぱり辞めようかなぁ…)
弱気な私は全身にグサグサと同姓の鋭い視線が突き刺さるのを感じ、ヘコんだ。救いなのは、同じ部の部員がいくらか優しい事。
(ま、まあ、世話係って、そんなに長い間やるもんじゃないし。勇太君、飲み込み早そうだし。少しの間だ、がんばろう!)
「おし、それじゃあミーティングを始める」
私の気持ちに気づいているのかそうでないのか、新垣はいつも通りミーティングを始めた。ミーティングは部長と副部長が総勢四40人いる部員の前に立ち、今日の練習内容や達成目標などについて意見を提示し、全員のやる気を高め、意思を確認する大事な場である。
 ところが今日は、いきなり勇太の紹介に入った。今日は練習内容の確認の前に、みんなに話しがある。さっきから我が部どころか、体育館中の視線を集めている男についてだ」
「いよっ、待ってましたぁ!」
「だろう?おかげで女子はみーんな上の空。色男に釘付けだ。とてもじゃないが練習出来そうにないから、勇太の紹介を先にすることにした」
「部長、気が利くぅー」
「俺は『いつも』気が利くんだよ。今頃気づいたか?薄情な女だなぁ、高橋」
「今日限りで薄情な女は卒業です!」
「素晴らしい!よーし、気分がよくなったところで、早速紹介しよう。本日付けでバドミントン部に入部した、勇太・レイシーだ。勇太、俺の側へ来てくれ」