翌日、木曜日。今日も少し早めに登校し、勇太の取材を終えると、琴美を捕まえ廊下へ連れ出した。琴美はまだカバンを机に置いてもいない。私がそれさえ待てなかったのだ。もちろん琴美は不安そうな顔で私を見た。
「どうしたの?美羽ちゃん」
「ごめんね、学校へ来たばかりなのにバタバタさせて」
「ううん。特にやりたい事はないから大丈夫。何かあったの?」
「うん、実は…」
私は勇太のブログに麗らしき書き込みがあった事を話した。すると琴美は驚いた顔で私を見た。
「麗ちゃんが?でも、そんな事するかなぁ?」
「私もね、信じられなかった。でも、普通の人は勇太君の事を『フェア・マン』って言わないでしょ?」
「うーん、確かに。言葉の意味は知っていても、勇太君に向かって使うか?って言ったら、使わないかも。たぶん『ハーフの男の子』とか『イケメン』とかだと思う」
「ブログを始めてからほぼ毎日50件以上の書き込みがあったけど、『フェア・マン』って書いてあるのを見たのは昨日が初めてなんだ。『意外と写真写りいいのね』なんて、上から目線で言うのも気になるでしょ?」
「そうだね」
琴美は強い意志を持ったまなざしで私を見た。
「たぶんその書き込み、麗ちゃんだよ」
「本当にそう思う?」
「うん」
「あんなに勇太君を嫌っていたのに、なんで突然ブログを見ようと思ったのかな?いっぱい勇太君をほめている記事やコメントを見たら、すっごいイライラするだろうに」
「麗ちゃん、急に考えが変わったのかな?」
「急に?でも、麗ってすごく意思が強いから、そうカンタンに考え替えたりしないと思う」
「昨日学校へ来なかったでしょ?家を訪ねたら圭介さんが出てきて『麗が部屋から出た形跡がほとんど無い』って言っていた。たぶん、ずーっとこもって色々考えていたと思うんだ」