「ここではね、そういう薬を売ってるんだよ。惚れ薬っていうやつだよ。」


そんなものあるわけ……


「あるんだよ。」


表情から俺の考えていることがわかったのか、ばあさんはそう答えた。


「お代は別にいくらだっていいよ。」


「いくらでも?」


信じたわけではないが、いくらでもという言葉につられ、財布を出す。


財布を開けると……10円。


どれだけ貧乏なんだよ、俺。


「10円しか持ってねぇ。」


「まぁ、いいさ。どうせお前さんは使わないしね、持ってるだけでいいんだよ。」


ばあさんはブツブツと小さな声でしゃべる。


「何か言いました?」


「毎度ありって言ったんだよ。」



それから使い方の説明を聞いて家に帰った。







俺が薬を飲む前日の話はこれでおしまい