「名波さん!」

校舎に向かう私に声をかけたのは数学教師の花村だった。


「いつかの先に帰ったの許してないから!」


あ………
忘れてた。

あの時に先に帰ったのまだ怒ってるみたい。


「すみませんでした。」


私が頭を下げると花村は笑って言った。


「いいけど。名波さん、アキラの事好きだとか言わないでよ〜??」


「は?」


顔が火照るのが自分でもハッキリ解った。


「アキラはまだ若いから勘違いしちゃう生徒が多くて。違うならいいの!」


花村先生がなぜいちいち私にそんな事を言ったのか何となく解った。


「違うわよね?」


花村先生は多分私が好きだって解っていてワザと聞いているんだって思った。


「あっ…アキラ!」


花村先生の手を振る先に佐藤先生の姿が見えた。


何人かの生徒が一緒だ。


「待って!」


花村先生が私を睨んで去っていく。

悔しいけど、動けなかった。


解った………
こういう事なんだ。


先生におはよって言いたいのに言えない。

会いたかったって言いたいのに言えない。

誰の言葉にも振り向かないで?

私はここだよ?


私の先生になったよね?


先生……
胸が苦しいよ……


ねぇ、ここで愛してるって言って??