大富豪

クソ!何もかも仕組まれていたんだ…言っても信用してもらえない。

俺は車の中で、下を向いたまま考えていた。

言ったって全てもみ消される。俺にはそれがわかっていた。

なぜなら、この警察官3人のうち2人は、組の連中だからだ。

こうなったら…もう…

俺は、左右に座っている警官のみぞおちに、手錠をかけられた手で打撃を突っ込んだ。
「てめぇ…」

そして、怯んでいるすきに前の席に座っている警官から素早く拳銃を取り、左右の男の頭に向けて発砲した。


しかし、拳銃は空砲だった。

絶望し、同時に目の前が真っ赤になった。
そのとき、危機を感じた本物の警官に急にハンドルを切られ、俺はバランスを崩した。

起き上がった左右の男は、俺を羽交い絞めにした。

そして、1人は俺の後頭部に拳銃を向けた。
俺は必死でもがいた。

異変に気付いた本物の警官が、車を停めて振り向いた。その額にはすかさず拳銃が突きつけられる。




「クソオオオオオオオオオオオオオオ!」




間もなく、乾いた2発の銃声が響いた。