ハッとしたときにはもう遅くて 先輩はあたしから視線を外してクスクス笑った。 そして 「中川さん、本は好き?」 「え?」 本……? なんでいきなりそんなことを聞くんだろう。 顔色一つ変えずに聞いてくる先輩を、ちょっと不思議に思った。 あたし、図書委員なんだから。 「あたし、一応図書委員なんで……本は好きです。」 「あはは、だよね。 変なこと聞いてごめんね? ………これ。」 先輩は、あたしの返事に笑ったかと思うと カバンから、小さな文庫本を取り出した。 .