すべてがスローモーションに見える。 あたしが突き飛ばされて そのままバランス崩して 瀬那くんが手を伸ばしてくれたけど、掴めなくて 階段の上から… そのとき、誰かが下にいたような気がしたけど…… グラッと視界が歪んだ。 ドンッッ 「っ!!清嘉!!!」 「…ぁ、あたしたち知らないっ…」 痛い…けど… 温かい……? 「ぇ…」 ふわりと漂う香り。 少しだけ嗅ぎ慣れた、爽やかで甘い匂い。 「…ふぅ、危ない。 大丈夫?中川さん。」 頭のちょっと上、優しい瞳があたしを見ていた。 .