そして先輩は、あたしの腕の中にあるピンクのペンキを奪った。
……え?
「2つは大変でしょ?
1つ持ってあげる。」
ニコニコの先輩に、ズキュッと心臓を射ぬかれる音がした。
……やっぱり“紳士”だ。
「ぁ、ありがとうございます…」
でも、持ってもらったら
わざわざ上の階まで来てもらうことになっちゃう…
先輩をそんな風に使うのはイヤ。
「せ、先輩。やっぱりあのっ…」
あたしが言いかけたとき。
「………っ」
少し前を歩いていた先輩が、立ち止まって振り返る。
辺りはうるさいのに、なんだか静まり返ったような雰囲気に
またドキドキする。
.

