『みんな、ホールに出てますよ』 「結構結構。この不景気にありがたい!」 威勢のいい声音とわ裏腹に、雅樹さんわ溜め息をつきながらあたしの隣に腰を下ろした。 「マイ、今日わもう歌ったの?」 『はい。今日も上手くBGMになりすましました』 「結構。いつもありがとう」 あたしわ常備されている蒸しおしぼりを、黙って雅樹さんに差し出した。雅樹さんわホッと顔をほころばせると、同じように黙っておしぼりを受け取る。 濡れた髪にひたいを軽く拭いながら、雅樹さんわ顔を傾けてあたしをのぞきこんだ。