あたしがそう言うと、乃愛さんわ「あぁ」と自分のひたいをパチンと叩いた。
「いけない、忘れてた」
佐木中先生わ、まだ30代の現職二世議員。
乃愛さんの1番の太客で、ほかの何を置いても佐木中先生との予定わ最優先しなくちゃならない。
それに、乃愛さんにメロメロの佐木中先生が乃愛さんがデート中に、よそえ電話する時間など与えてくれるわけがないのだ。3人で困った顔をしていると、中肉の男がドアを開け顔を覗かせた。
「いつまでくっちゃべってんだー?朝礼始めるぞ」
一見人のよさそうな印象のその人わお店でオーナーの次に偉い人、マネージャーの本木さんだ。柔和なその顔つきとわ裏腹に常に冷静でなかなかのやり手。女連中に「このマネージャーわ自分のことを考えてくれている」と思わせておいて、その実うまく店の方針に従わせる・・・・なんて計算しつくされた人当たりのよさが武器みたい。
なんでそんなことがわかるのかって言えば、やっぱあたしが少し浮いていて、ホステスさん達の輪からはずれてあるからなんだろう。
