ーそんな事、俺にだって分かってる。

…ただ、アイツの力はまだ不安定でいつ暴走状態になるか分からねぇ…

朱雀の暴走は玄武の俺にしか止められないっていうのに…

…ちくしょう……どうすれば……ー


そんな事を考えながら氷は街の中を歩いていた。

先程から來奈を探しているものの、数分前に護の家を出ていた彼女の姿を見つけられずにいた。

あてもなく街の中を行ったり来たり。

そして、ある店の角を曲がった時―


ドンッ ドサッ


走ってきた誰かとぶつかり尻餅をつく。

「ってぇ……何処見て歩いてんだよ!」

苛立ち始めていた氷は、ぶつかった相手の少年に向かって怒鳴りつける。

「すっすみませ……氷!?」

怒鳴られ、反射的に謝りかけた少年は氷を見ると途端に言葉を切る。

「隼人だったのか。」

氷もなんだ、といった様子で立つとまだ立てずにいた隼人の腕を掴み、引っ張る様にして立たせた。

「お前、気を付けろよな。」

パンッパンッと服の砂ぼこりをはらい、軽く睨みをきかせた目で隼人を見る。

「ごめん、他の事に気を取られてた。」

彼も同じ様に砂ぼこりをはらうと、落ちていた自分の帽子を拾い短い茶髪の頭にそれを被せる。