― 詳しく訳を訊くと思っていたが…

來は部屋から出て扉を静かに閉めた。




そして暗い廊下を歩いて行く。


辺りには來奈の足音だけが響く。



ふと他人の気配を感じ脚を止める。

この気配は…

「…沙柚?」

そう暗闇に問いかけるとそこから沙柚が現れた。


小さな炎を灯すと彼女の姿が浮かび上がった。



いつもと違った悲しそうな笑顔。

今にも泣きそうな潤んだハチミツ色の瞳




そして肩の黒いケープ





「…來…」

再び名を呼び沙柚は來に抱きついた。


小刻みに震える沙柚の肩

「…來ぃ……良かった………」


肩の辺りが暖かくなってくる


來はそっと傍らの炎を消した。