ふと気が付くと來奈はまた一面乳白色の世界にいた


― …またか…



辺りを見回す





誰もいない





気配もない








その時また朱雀の刻印が赤く発光した。




そしてそこから現れた粒子が集まり朱雀が姿を表した。



赤く大きな翼を羽ばたかせ目を開く





『どうであった?我が力は…』



地の底から響くような低い声


「…」

『悪く無いであろう?』

「…」


來奈はそう問う朱雀に背を向ける。

『…迷っておるな……
植え付けられた記憶と蘇った記憶の狭間…』

朱雀の背後に二つの映像が浮かぶ


來奈の二つの記憶


『どちらが誠の記憶か…どちらを信じて良いのか…
誓いを立てていてもまだ揺らいでおる。』


握られた拳が震える


「…オレは……一体……どれが……自分……オレは……
……朱雀……風火來奈………來………
……オレは……………誰だ………?」










『……全てソナタ……陽の風火來奈も…陰の來も全てソナタだ…
…陰と陽…どちらでも選ぶがいい…信じるがいい…』


「…」




― …オレは…


俯いたままの來奈




『…いずれソナタ自身の記憶が教えてくれる…』



朱雀は目を細めて來奈を見下ろす




そして粒子となって來奈を包み込む



來奈は自分以外の存在を自分の中で感じながら薄れゆく意識を手放した