「そういえば、來奈、朱雀の力はどのくらい使えるようになったんだ?」

しばらくの沈黙の後、裕が口を開いた。

「大分慣れた。
でもまだ使い馴らせてないのかもな。不完全って感じが少しする。
それに、今の所朱雀でいられるのは10分ってトコかな。」

「本当に1人で大丈夫か?」

心配そうに裕は言った。

「大丈夫でなければ1人で行かない。
オレ自身、けりをつけたい事もあるしな…。
それに、もう誰も巻き込みたくはない。
だから…」

「『だから1人で行く』だろ?
來奈は決めた事は最後まで曲げない。
俺が止めたって1人で行く気なんだろ。」

「……」

黙り込む來奈にそっと微笑みかける。

「…裕…、オレ絶対に倒してみせる。
哀哭溜を…
みんなのために…自分のために…」

瞳を真紅に煌めかせ微笑み返す。

そして、ずっと握り締めていた朱雀石の包みを制服のポケットに入れると、じゃあ、と軽く手を挙げ門の方へと歩いていった。


「必ず戻ってこいよ…」

彼女の後ろ姿を見送りながら、裕は呟いた。