Genius~守り人~

「始まったみたいね。」


フィールドに続く扉を見つめ草火は呟く。


扉の向こう側からは時折破壊音や興奮した観客の声が聞こえる。


「盛り上がってるみたいね。」

「…そうですね。」

草火の呼びかけに來はそっけない返事を返す。


來は先程からずっとトーナメント表を見ている。


「…三回戦であたってしまいますね。私たち。」

表を見上げたまま來は呟く。

「そうね。」


草火は來の隣に座り直し彼女と同様に表を見上げる。

「その前に私は二回戦で清洋君と当たるわ。」

「負けなければ、ですけど。」

「フフッ、それもそうね。
…それよりも來、あなた大丈夫?
一回戦の相手前回の準優勝した人でしょ?」

草火は來に目を移す。

「そうでした。でも書類にあった程度なら平気です。
それに、殺しても構ワナイナラ…」


來の瞳が一瞬漆黒へと変化する。


「來?」

「はい?」

草火が声を掛けると瞳は元に戻り、本人は「どうかしましたか?」と草火を見上げる。


「…いえ、何でもないわ。」


首を振って顔を逸らす。

― 自覚がない…?
…まさか闇が…?
なら急ぐ必要がありそうね。