「ごめん、遅くなって。」

來奈が隣の建物の柱にもたれ立っていると、障子が開き紺色の狩衣を着た少年が出てきた。

「そんなことはありません。みか…」

「今の俺は帝じゃない。だから敬語辞めてくれよ。」

姿勢を正し、改まった來奈を制して言った。


少年は一応ウルトの帝

まだ10代だが、先帝である彼の父親の逝去により、2年前に即位した。



「……。分かったよ、裕。
それにしても、大分馴れてきたみたいだな。
帝の仕事。」

「そうか?
まぁ“人格変化〈メル=メタモ〉”があるからな。
でもそれもまだちゃんと使い馴らせてない。
さっきも隊長達の驚いた声で“術〈クラフト〉”が解けそうになっちまった…せめてお前位使えるようにしておきたいよ。」

裕は頬をポリポリと掻き、溜め息をつく。