「來?」

草火が來の部屋に帰ると來はベッドの側で立ったまま床を見下ろしていた。

「來?」

再度呼び掛けるとようやく來は顔を上げた。

「草火さん…すみません…」

ストンとベッドに座り込む。

「私はいいの。ねぇ來、」

「襲撃の時は気が付いたら私の周りは何時も血の海。殺したくなくても。間の記憶は無いんです。感情も。

『災厄を呼ぶ力を持つ者』と言われ、少しでもいいからこの力を持つことで傷ついてしまう人が減るならとここへ来たのに…
今の私がしていることは全く逆のこと。
そう思うようになって…
でもその事すらどうでもよくなって…
…だから…陽に行かなく…なって……
忘れ…かけていたのに………」

俯いたまま草火に話していく。

その声も次第に小さくなって、消えた。



脳裏に浮かぶ鮮明な映像

血の感触

僅かに息のある人のうめき声





イヤな記憶