voice=kiss






「人の陰口聞いて金取ってたらしいな」



そう言ってその人はニコニコと笑った。


その通りだ。


どんなに小さな声で喋ったって私にはお見通しだった。

口の動きでわかる私なら。


陰口だってなんだって集中して見ればわかってしまった。


誰が誰を嫌っているとか、誰が誰を好きだとか。


人のそういう事情はある程度知ってしまっていた。


そして、その情報をいつにまにかお金で買われるようになった。


それが「聞き上手」としての私の居場所だった。


次第に金額も聞く内容もエスカレートしてしまって、中3の一学期でやめてしまった。


やめたきっかけはそのエスカレートではなく、実際絡み合う人間関係に疲れたのだ。


どんなに仲がいい親友だと言っても、陰ではお互いの悪口を言っている。

そういうのを見ているうちになおさら友達を作る気力が失せた。

人のことも信じられなくなっしまった。



できればあの時のことは思い出したくない。