voice=kiss




屋上へあがる階段の前で

私はやっと状況に整理がつき、藤枝に抵抗を始めた。

ぐいぐいと手を引っ張る藤枝の手を振り払う。




「あのさ、一人で盛り上がるのも勝手だけど勝手に連れ出さないでくれる?」



と冷たく言い放った。



「ごめん、でもみんなに紹介したいんだ!!」


「紹介って…」



冷たく言たのは、ほとんど無意味だったらしく

藤枝は、また私の手を握って引っ張ろうとする。


えらいのに引っかかってしまった。と今頃後悔。



「ちょっ…そんな急に…」


「急でごめん!!」



そう言って階段を駆け上がっていく。

私はもはや散歩中の犬のように、繋いだ手をリード代わりに連れていかれる。

逆か…

元気がありすぎる犬に振り回される飼い主

それが今の私だ。