薫が部屋を出て行ったあと僕は着替えの服を持ってシャワー室に行った。

シャワーを浴びた後、食堂でご飯を食べて自分の部屋に戻る。

また今日の朝、お兄ちゃんに会わなかった。

ロキが逃亡してから、お兄ちゃんは王家の護衛にずっとついている。
たまに交代するときは清が担当してるみたいだけど、王家はやっぱりお兄ちゃんのほうがいいみたいで、結局4時間ぐらい寝たらすぐに王家に戻る。その繰り返しの毎日だった。

先ほどの薫の話で昔のことを思い出してしまった。

凛兄様はあのとき、どうして何も喋ってくれなかったのかな?


「どうして…敵になったの…」


そうぼやいて椅子にかけてあるコートを掴んだ。

「はぁ…」

休息するにも眠気がないため、任務に出ることにした。

1人でいたらずっと兄様のことを思い出しそうで、頭が痛くなりそう。


まずは司令室でアリアに許可をもらいに行かなきゃ。


部屋をでて司令室の扉をノックをした。

「入れ」

声に反応して、勢いよく扉を開けるとソファーに横たわっているお兄ちゃんの姿が見えた。

「お兄ちゃん!帰ってたの?!」

「水希か?さっき帰ってきたんだよ」

お兄ちゃんは目元のタオルをお湯の入った桶に入れて起き上がる。

お兄ちゃんが呼ぶように手招きをしたから僕はそばに近寄った。

「さびしかったかー?」

そういいながら僕の腕ごと体を抱きしめる。

「薫が構ってくれたから大丈夫だったよー!」

「大丈夫とか、お兄ちゃん寂しいなー」

わざと子供っぽくお兄ちゃんは頬を膨らませる。でもすぐににっこり笑って僕の頭を撫でた。

「よしよし。仕事が一段落したら、休み取ってお出かけしようか」

「本当?!」

「あぁ!水希の行きたいところに連れてってやる!」
僕は嬉しくなってお兄ちゃんに抱き着いた。

「お兄ちゃん約束だよっ!」

「あぁ。約束!ところで水希、何か用だったのか?」

嬉しさのあまりに僕はすっかり忘れていた。