「もう、そんなこと考えなくていいんだ」

凛さんはゆっくりと視線を窓の外へと変えた。

「凛、やっと会えたな」

そんな空気を破るかのようにお兄ちゃんは凛さんに声をかけた。
にっこりと笑って、ゆっくりと手を差し伸べていた。

「俺はお前の兄で零っていうんだ。種族はベルリク族。やっと会えたな」

凛さんはお兄ちゃんの手をじっと見てからお兄ちゃんの目を見た。

「兄…?」

「そう、お前のお兄ちゃんだ。」

お兄ちゃんは差し出した手を引っ込めた。
僕はただただお兄ちゃんの背中にしがみついて兄と呼ばれる人物を見ていた。

「しばらくはここで療養してから凛には外で生活してもらう。いいな、零」

「はい。王家で療養させていただけるなんてきっと凛も元気になります。…水希、あの人がお兄ちゃんだ。凛お兄ちゃん」

「り、ん…おにいちゃん?」

「そう。お兄ちゃん。」

お兄ちゃんの足越しに見えた兄は虚ろな目で雲や花を眺めているばかりでこちらの会話は聞こえないようだった。

この人が僕のお兄ちゃん____。

「さ、零挨拶に行くぞ」

「はい。水希はここで凛お兄ちゃんと一緒にいるんだ。」

「え!おにいちゃん!?ぼくもいっしょにいく!!」

ここに2人きりでいるなんて僕には耐え切れなかった。
なんとしてでもお兄ちゃんと離れたくなかった。

「ごめんな。お兄ちゃんは、偉い人に会わなきゃいけないから水希を連れて行けないんだ。おとなしくここで待ってるんだ」

「や、やだ!ぼくもいくー!!!」

「いい子だから、な」

お兄ちゃんは僕の頭をなでて騎士の人と部屋から出て行ってしまった。

「おにいちゃん…」

僕はなるべく部屋の隅で待つことにした。