「凜兄様の髪色はシン族独特の緑色じゃなかったんだ。シン族と思えないほど黒に近かったんだ。かといって髪を染めているようには見えなかった。深緑色っていうのかな?瞳も深緑色で暗いとこで会えばアスベル族と間違えそうなぐらい」

「それアスベル族じゃないのか?シンの神子様は人の前に姿をめったに現せないと文献で見たことあるぞ。」

シン族の人間ならば、神子様と話をするだけで恐れ多いところだ。
どの帝國よりも神子様を大事にしているのがシン帝國だ。
そして神子様も滅多に俺たちと交流を持たない。高貴な方々だ。

「ううん。神聞様は確かにベルリク、シン、に僕の兄がいるといってた。だから間違いはないよ。…だけど、その髪色から零お兄ちゃんはアスベルとの繋がりがあるんじゃないかって疑ってた」

「お前も疑ってたのか?」

しばらく無言になった。

2分ぐらいたっただろうか…水希は眉を下げて答えた。

「疑ってなかったよ。疑う前になるべく兄様には近づきたくなかった」

「近づきたくない?」

「僕は兄様が怖くて近寄れなかった。それに3年前僕は騎士でもなかったから難しいことわかんないよ…」

水希は何を思ってこんな表情をしているだろう。

肉親を怖がり肉親を疑い兄が肉親を殺した…この世は殺さなくても肉親はいなくなってしまうのに。

「なぁ、凜ってどんなやつだったんだ?」

「兄様?…よくわからない人だった。オーラが怖くて人を近づけさせない。そんなだから、僕は兄様の声すらまともに思い出すこともできないんだ」

「そっか。」

俺は一言しか言えなかった。

「零も怖がってたのか?それとも水希に接するみたいにブラコンになるのか?」

場の雰囲気を戻すために、冗談混じりに言うと水希も笑顔になった。

「ううん。お兄ちゃんは怖がってなんかなかったし、ブラコンじゃないよ。兄様と普通に話せてた。と言っても、お兄ちゃんが一方的に話した感じかな?」

水希がくすくすと笑った後、眉を落として苦笑いのような笑い方をした。

「兄様は何に対しても無関心だった。薫、何で兄様は敵の味方になっちゃったのかなー…?」

「水希…?」

「僕ね、兄様のこと何にも知らないんだ。何でロキの味方についたのかさえ。そんなこと言うと兄様がした罪から逃げたいように聞こえるかもしれないけど、本当に知らないんだ」

たった9歳の少年が何故こんなことを思って生きなければいけないんだと思った。

俺は水希を抱きしめた。

水希は慌てたようにもぞもぞと動いたが、俺は強く抱きしめた。