「只今戻りました。」

司令室に入ると、アリアがものすごいスピードで書類の整理をしていた。

零の姿が見えないことからきっとすぐに城の警護に行ったのだろう。

あいつ、いつか過労で死ぬんじゃなかろうか…

「はい。ご苦労様でした。特に薫はいきなり頼んで申し訳なかったわね。」

「あぁ。気晴らしには楽しい仕事だったぜ」

「それならよかったわ。皆夜もお願いね!あっ!それと、夜の任務に行く前に、水希と薫は渚さんのとこ行ってね。武器ができたそうよ。」

「もう出来たのか?」

「昼には出来たみたいよ。日に日に妖魔の数も増えてるからみんな気をつけてね。」

「わかった」

「それじゃいってらっしゃい!」

「いってきます」

俺たちは部屋から出て、清は休憩に、俺と水希は再び外へと出る。

「お兄ちゃん…またいなかった」

外に出ると水希はしょんぼりとした声で言う。

まだ9歳だもんな。
お兄ちゃんと言っても、年も離れているし零が親代わりのようなもんだしな。

「この事態が静まったら、また零とゆっくり会えるさ。大丈夫。」

「…うん。」

「それまでは俺が水希のお姉ちゃんだ。」

水希は一瞬ぽかんとした顔をしたがすぐににっこりと笑って俺の手をとって歩き始める。

俺もこんな可愛い弟がいたら、きっと、零のこと馬鹿に出来ないな。
零は水希が可愛くて可愛くて仕方がないのだろう。

上機嫌で鼻歌を歌ったりと、水希は嬉しそうだ。

少しでも、俺が水希の寂しさをとってやりたい。
家族がいるのに、会えない寂しさはきっと辛いだろう。

まだこんな幼い子に、そんな寂しい思いをさせてはいけない。



「おーい。やっと来たか!武器出来てるぞ!」

遠くで渚さんが手をぶんぶんとふっている。
隣には弓と鞘におさまってる剣がおかれている。

「ほれ、これ。」

渚さんに手渡されたのは前の剣より長く、軽かった。


「最初は扱いにくいかもしれないが、お前にはこれぐらいの剣がいいとおもう。大事に使ってやってくれ。」

「ありがとうございます。」

さっそく背中に背負う。

「水希はいつも通りか?」

「うん、大丈夫!いつもありがとう!」

そういって水希は弓をしまう。

「またなんかあったらすぐにこい。…夜の任務気をつけてな。」


「ありがとう。いってきます。」

そういって渚さんと別れる。

俺は城内。水希は城外へと警備に向かう。