「お願いだから、やめてくれ」

ぎゅっと抱きしめられた。

その時に私の何かが切れて、目から涙がぼろぼろと流れ出す。

瞬きをすることも、身体を動かすことも出来ずにただぼろぼろと涙が溢れるだけだった。

「き、よ先輩…リオは?」

「…」

「ねぇ、なんで…血の海なの…なんで…リオは強いよ…なんで血まみれなの?おかしいよ」

「…」

「なんで黙っているんですか?」

清先輩の抱きしめる力が強くなる。

その苦しさで私は我慢が出来なくなった。

「いや!…いやあぁぁぁぁぁぁっ!!!リオォォォォ!!」

私は清先輩の胸の中で暴れた。

いっぱい清先輩の胸を叩いた。

その温もりから逃げようと暴れた。

でも先輩は離さなかった。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「うっ、」

清先輩の苦しそうなうめき声が聞こえても私は暴れた。

「離して!離してぇぇぇ!!!」

「絶対離すかよっ!!!!」

先輩の怒鳴り声が聞こえて身体が固まった。

始めて怒鳴られた。

そろりと見上げると、苦しそうな表情で私のことを見ていた。

そっと私の頭を手で抑えるとぽんぽんとリズムよく叩く。

「怒鳴りつけてごめんな、薫」

「…清先輩。私こそ、強く叩いてすいませんでした…痛かったですよね、ごめんなさい。」

清先輩は何も言わずただぽんぽんと頭を優しく叩き続けた。

だんだんと落ち着いてきた。

「清先輩、もう大丈夫です。もうパニックになりません。少しだけ離して下さい。」

清先輩はゆっくりと私を解き放すと、私は清先輩の胸から血の海へと入って行く。

靴に跳ね上がる血が黒のローファーに染み付いていく。

ブレスレットを掴むと私はハンカチでブレスレットについている血を拭う。

「リオ…」

私は、家族も親友も…全てを妖魔に取られた。

妖魔に対抗するためにこの世界に入ったのに、また親友も失った。

私はまだ弱い。

少しでも強くなりたい。

私______俺は、強くなりたい。

俺はもっともっと、強くなるんだ。

俺は…俺みたいな人をこれ以上増やしてはいけないんだ…

泣いているだけではだめだ。

ここで挫けてはだめなんだ。

「リオ、わた___俺、もっと強くなるから。これ以上、妖魔の被害を増やさないために。…お前のブレスレット、預かっとく。」


そのブレスレットを腕にはめて。

俺は清先輩の側に戻る。

「お前…」

清先輩は何かを言おうとしたが、途中でやめる。

その代わり、俺の頭をぽんぽんと再び叩き、俺の腕を引っ張る。

「お騒がせ致しました。リオ・ユギンの捜索宜しくお願いします。失礼させて頂きます。」


清先輩が兵士団にそういうと真っ直ぐ学校に向かって帰る。

学校の闘技場につくと、沙羅先輩がいて、俺たちの様子から何かを感じたのか剣を構えた。

俺も剣を取り出し構えた。

がむしゃらに。

涙が溢れて、視界が霞みながら剣を振った。

俺は、強くなる。1日でも早く騎士団に入団するんだ____!!