「一体零がどうしたんだ?」

いきなり様付けをしだす水希。
普段は仲の良い兄弟でお兄ちゃんと彼は呼んでいたはず。なのに、今は兄様と丁寧な呼び方に変わった。

「あっ…その…」

水希は目線を外し口を閉ざした。

水希の次の言葉を待っていたが、水希から言葉が発せられる様子はないようだ。

「俺のことではない」

そこに水希ではない声が扉のほうから聞こえた。



「お兄ちゃん!」

扉のところには零が1人立っていた。
零はベッドの横にある椅子に腰掛けた。
水希は申し訳なさそうに首をたれた。

「どういうことだ?」

零は眉間に軽くしわをよせ、直ぐに元の澄まし顔で答えた。

「水希は、別の任務でとある力を浄化していた。その力が奪われたということだ。」

「その力は妖魔の力ほど強力なもので、人間が扱えるものではない。もしそれを奪うことを目的に水希を狙ったのであれば、俺たちの敵だ。」

水希は零を見て驚いた表情をした。

「水希?」

水希は、はっとして振り向いてなんでもない。とだけ答えた。
反応が少しおかしいような…

追求しようと手を伸ばそうとしたら零が話をしはじめた。

「國はそいつのかけらを引き抜いて妖魔に対抗する力を得ようとしたんだ。引き抜くことに成功したんだが、かけらは憎悪に蝕まれていて手につけることができなかった。そのかけらを水希が清めていた。っと簡単にいうとそういうわけだ。」

「そいつのかけらは強力なものなのか?」

「あぁ。國で1番強いとされた人物だからな。」

「とにかくやばいってことだよな?"誰か"は、その力を水希から奪った…考えられるのは…」

「ロキ・ロレッタというわけだ。」

「こちら側が不利になったな。」

零は頭を抑え椅子に座る。

「今夜、仕掛けてくるかもしれない。夜回り…気をつけろよ。」

そういって零は病室を出て行った。