「…離して」
「離すと何処かに行くだろ」
「…行かない」
ゆっくりと離れると彼は振り返る。
「…殺されるかも知れないよ」
「それが?騎士になったときから俺は死を覚悟している。でも貴方には殺されないから。だって、俺は騎士だから。」
ふっと息を漏らす。
「壊れたら、頼むよ。」
「あぁ。任せろ」
彼は妖魔を撫でてから歩く。でも方角は皆がいる場所に向かっていた。
「おいていくよ」
そのとき彼は少し口角を上げた。
彼も…ちゃんと笑えるのだ。
彼も人なのだから。
「貴方は立派な人ですよ」
彼は、何も言わずに歩いた。
俺と妖魔はその後ろを歩く。
妖魔は時折顔を彼の手に擦り付ける。
そのたびに彼は妖魔を優しく撫でた。
妖魔は嬉しそうに唸った。

