「悪い夢でも見ましたか?」
妖魔の腹を枕に寝ていた"あいつ"が、寝起き悪そうに起き上がった。
頭が痛いのか、額を抑え目を瞑る。
「大丈夫ですか?」
「…」
何も言わなかったが、頭を一度こくりと頷きこちらに目線をうつす。
虚ろな目でこちらをしばらく見たあと、妖魔を撫でる。
妖魔は嬉しそうに唸る。
まるで犬のようだな…。
「…なんでここにいる?」
「エデ…レオが探しておりました。」
「あ、そう」
興味なさそうに返事をすると、立ち上がり歩きだした。
いつもそうだ。すぐに離れていく。
「なんですぐに離れるのですか?」
彼は立ち止まり、こちらを向かずに答える。
「あまり、近寄らない方がいい」
常に面をし、顔など見たことはない。
けれどそのとき、きっと彼は寂しい表情だろうと思った。
「皆、貴方様の、身を案じております。ですので、私達と共に行動を…」
「その口調辞めて」
強い口調とともに彼は振り返る。
「…ですが、貴方様は私たちにとって話すことも許されない存在なのです。私は無礼を承知に話しております。」
「辞めて」
彼は睨みつけるように俺を見る。
「…わかりました。」
彼の威圧に耐えきれず首を縦にふる。
「お願い、俺たちと行動をしてくれ。」
妖魔が唸りながら俺の近くへと来る。
「オンナ、主ハ、我ト行動スル。構ウナ」
「だが、それでは…」
彼は歯を食いしばり、拳を震わせている。
時が止まったように時間はゆっくりと進んだ。
「いつ、壊れるのか…わからないんだっ…!」
俺は体が固まった。
指先も動かない。
背筋が凍るとはこのことか…
「…だから俺たちを避けるのか?」
彼は何も言わず、そっと後ろへと下がった。
「待って…!お願い、待って。」
「…去れ。」
彼は背を向けて歩き始める。
俺はとっさに彼の体に飛びつく。
彼はびくっと体を震わせると歩くのをやめた。
「貴方は1人で抱え込みすぎる!貴方の力には及ばないけど、もっと俺たちに頼ってくれ!!俺たちは、皆…貴方と同じ気持ちなのだから…!!」

