「なっ…んで…僕1人でやり遂げなきゃ…」


脳裏にかすむ、兄の血みどろの姿。

妖魔に噛まれた脚が引きちぎれそうだった。

僕のせいで…お兄ちゃんの脚が…


だから僕がお兄ちゃんの分まで戦わなきゃ。

死んだと思っていた兄様…
僕の封印していたかけらで力を戻しているはず…早く…早く見つけなきゃ!


清が来る前に凛兄様を見つけないと。


焦る心ばかり先立ち、手がかりになるようなものはない。



「僕は本当に…役立たずだね」

ぽつりと呟くけれども、誰かが慰めてくれるわけでもなく。

ただの小さな呟きだった。

「闇雲に探しても駄目だ…どうしよう…」

考えすぎて胃がきりきりする。冷や汗が出てくる。

「まずは…兄様のことを知ろう。大丈夫…大丈夫。落ち着くんだ。」

兄、霜崎凛はシンの神子。

シンの神子は他の者に姿を現さないと言われる。
けれど、兄は僕たちとコルディアで出会う。

容姿は、髪も瞳も深緑色。
これは、アスベル族の特徴に似ている。
でも…兄は確かにシンの神子…

まず、兄はなんでコルディアに?
シン族の兄の髪と瞳はなんで黒に近い深緑色?


「ほ、他に…他に何か…」


「坊や、顔色悪いけど大丈夫かい?」

そっと顔を上げると目の前には老婆が心配そうに僕のことを見ている。

「…大丈夫で、す…」

「そんな大丈夫という顔ではなさそうだけどねぇ。ほら、おいで。」

「あ、ちょっと…!」

そのまま手を引かれて村の中に入ると一つの建物へと入れられる。

どうやら老婆の家らしく、ソファまで案内されるとにっこり笑って老婆は部屋を出て行ってしまった。

しばらくして、老婆は戻ってきた。

「ほら、うちの農場で育てた牛のミルクだよ。美味しいからたぁんとお飲み」

「有難う」

老婆から受け取ったホットミルクを一口飲むとほっと気持ちが和らいだ。

温かい…


「坊や、何処から来たんだい?この辺りじゃ見かけないねぇ」

「僕…旅をしてるんだ。」

「なんじゃ、坊や1人で?」

「あ、ううん!お兄ちゃんと」

「おや?お兄ちゃんは?」

「今ちょっと別行動してて…もう少ししたら帰ってくるよ!」

「…坊や1人で怖かったじゃろ?お兄ちゃんが来るまでうちでゆっくりしてなさい。そうだね…この老いぼれに坊やのお話を聞かせておくれ」

突然にこやかに老婆は話を振ってくる。
先ほどから嘘に嘘を重ねているのでだんだん苦しくなってきた。
お兄ちゃんからも僕は嘘が下手というのはよく言われる。
ここはなんとか乗り切らなきゃ…

「…僕おばあちゃんの話を聞きたいな!」

あぁ…胃がキリキリする…

「わしの話かい?うーん…そうだねぇ。じゃぁ、この國のお話をしてあげよう。坊やもそろそろ自分の育った國について勉強しなきゃいけないからねぇ」

そう言葉が出るとどっと疲れが出てきてそっと背もたれに寄りかかった。