薫がいる_______
薫が、そばにいる!!
「薫!!かおりーーっ!!!」
茂みをかき分け、走り続ける。
お願いだ、まだ居てくれ。
城壁から随分はぐれ、平原に出てくる。
「はっ…はぁっ…かお…り!」
息を整え、もう一度よく見渡す。
「かおり…薫ーーーっ!!」
腹の底から声を出した。こんなにも大きな声を出せばきっと妖魔が集まってくるだろう。
けれど、彼女に会いたい。
彼女を失いたくないことで、いっぱいでいつの間にか俺は声を張り上げていた。
正面の少し離れた岩場の影に2人の影が現れる。
その影は2人とも見知った顔だった。
月明かりに輝く青色の髪と緑色の髪。
「夜中にうるさいなぁ」
「かお、り…と、キトス=シーイング…」
零が司令官になる前に司令官を勤めていた彼は、よく本部に訪れていた。
キトスの腰に抱きつくように薫は立ち、キトスは薫の腰を支えるように立っていた。
その姿を見て俺の頭が真っ白になっていく。
「また厄介なものが来たね。うちの子になんの用?」
キトスのニヤリとした顔。
自分の中の奥底から苛立ちが溢れて、腹が立ちすぎて…
キトス=シーイングの顔を殴りたくなる。
薫もキトスの腰から腕を離すが寄り添うように立っていた。
「薫を探しにきたようだけど…ごめんね、この子は僕たちのだから。」
キトスはにこりと笑って薫の額にキスを落とす。
「ちょ、ちょっと!」
真っ赤な顔で…頬を染める薫。
勝ち誇ったキトスの顔。
剣を握る手に力が入る。
いやだ…やめろ…
「薫は俺たちの!そーゆうことだから!」
「…はな、せ」
「…はい?なんて言ったの?」
「薫を離せ!帰るぞ!」
薫はそっと顔を上げると、俺を見た。
「悪い…俺はこちら側、零の敵だから。」
そう、悲しそうに笑った君。
「何を言ってるんだ?お前は騎士だろ!!!」
だから、俺は手を伸ばしたんだ。
こっちにおいで、と。
君は首を振る。
行かない、と。
「なん…で…なぁ…なんで…いつから俺たちは…バラバラになってしまった…?」
薫はそれには応じない。
悔しくて悔しくて。
一歩づつ前に進むけれど、でも、薫のところまでは遠くて。
ちょっとづつ近づくけれど、でも、なんだか遠くて…
「先輩は…凄いね。私のこの髪を見ても、動じないんだから。」
わたし____?先輩?
今、”私”と言った?”先輩”と言った?
「薫、今…私って」
「…有難う。次に会ったら敵だね…さようなら。」
キイイイイイィィ
甲高い鳴き声の後、周りは風が吹き草花が風に舞っていく。
目の前にいた2人は、妖魔の背に乗って天高く飛び立って行った。
俺は妖魔の風に飛ばされ、地面に体を打ちつけた。
その衝撃で頭を打ち付け、視界が歪む。
もう手を伸ばしても、君はいない。
俺は君を守れなかった
君に憧れて
君のことを守りたくて騎士になったのに。
その君を倒さなければいけないのか。
そんなの…嫌だ、な。
皆、ごめん…俺には無理そうだ。
薫と戦えない…
今はまだ無理…

