地面から土が盛り上がり、僕達が立っている場所が沈み始めた。
「逃がしてたまるものか!!」
フヴィッチ大臣が追いかけようとすると土が足に絡まり身動きが出来なかった。
地面の動きが消えたとき、兵士の死体と僕達3人しかそこには居なかった。
「零殿!」
フヴィッチ大臣の声を聞いて恐る恐るお兄ちゃんの姿を見る。
そこには、妖魔の牙で貫通し、いまにも千切れ落ちそうな足があった。
「ひっ…!!!お兄ちゃん!!!」
「水希殿は見るな!零殿、自分の足をつかめますか?」
お兄ちゃんは、コクコクと無言で頷き悲痛に顔を歪めていた。
フヴィッチ大臣はお兄ちゃんを背に乗せて沈みの中から出た。
振動のたんびにお兄ちゃんは歯を食いしばる。
「お兄ちゃん…ごめん、ごめんね!お兄ちゃん!!」
「水希殿は道化の後を追い続けて下さい。私は零殿を運びます。」
ゆっくりとフヴィッチ大臣が歩き出すときに、苦しみながらも、僕を安心させるためににっこりと笑ったお兄ちゃん。
「みず…き。お兄ちゃんは、大丈夫だから…後は…頼んだぞ…」
お兄ちゃんは目を閉じながらも僕に声をかける。
僕はコクコクと頷き、その姿をみたフヴィッチ大臣が再び歩き始める。
僕があの時スタンさんに捕まっていなければ…
そうしたらお兄ちゃんの邪魔なんかにならなかった!
涙がとめどなく溢れ出てきた。
僕が、動かないと。
僕が、やらなきゃ。
僕が、行かなきゃ。
僕が、道化を捕まえないと。
僕が、兄様を捕まえないと。
暗示をかけるけれど、足は一向に動かない。
怖い怖い怖い
お兄ちゃんのように足が千切れてしまうのが怖い
お兄ちゃんがいなくなるのが怖い
何もかもが、怖いっ……
誰かっ…助けて
僕を1人にしないでっ…!!!

