薫がいなくなってから一週間。
ロキのときのように手がかりはつかめずに、淡々と毎日が過ぎていった。
もう皆の顔は疲労でくまが出来ていたり、げっそりとしている。
皆あれから妖魔退治や捜索で疲れが溜まってきているみたい。
「やばい。今なら俺、立ったまま寝れるよ」
皇紀があくびを一つした。
先ほどまで休憩で今から僕と一緒に任務につくところだった。
妖魔の数も増えて前より戦闘回数が増えたのも、疲労の原因。
それに加え、薫の捜索。
僕達もそろそろ限界に近づいていた。
「皇紀、寝ないでね?僕、もう皇紀を部屋まで運ぶ体力なんてないんだから」
「ひどいなぁ…って、あれ?あいつ誰?」
廊下の先にはお兄ちゃんと騎士の制服をきた見知らぬ人だった。
二人は僕たちに気づき、近くまで歩いてきた。
「はじめましてー!今日から臨時で騎士やりまーす。リスカでーす。どうぞよろしくー!♪」
僕の目の前でリスカという人がポップキャンディーをなめている。
「弟の水希と暮内家の長男、皇紀だ」
リスカさんは僕達を交互に見るとにこりと笑った。
「へー。はい、どーぞー」
リスカさんは僕にポップキャンディーを渡してきた。
同じように皇紀にも一つポップキャンディーを手渡していた。
そのキャンディはいちご味だった。
「俺の知人でかなり馬鹿だが戦闘能力は高い。ちょっと会話するのに疲れるが、よろしくやってくれよ」
「うん!よろしく、リスカさん!」
「今は大変なときだけど、頑張ろ!」
「よろしくー♪」
「じゃ、リスカ。あとは頼むな」
「はーい、ばいばーい!」
お兄ちゃんはそういって廊下の反対側を歩いていった。
リスカさんはお兄ちゃんに手を振ったあと、こちらに振り返る。
「さてと!じゃーいこっか」
リスカさんと僕達は、そのまま城下へと出て行く。
周りは暗闇へとかわっていくとこだった。
3人で暗闇を歩いていると、リスカさんは上機嫌で鼻歌を歌う。
ふんふん〜♪
先程からこの人を戦士や兵士に見えない。
「あの、リスカさんは、兵士なんですか?」
「そうだよ♪」
その言葉に皇紀もびっくりしたようで、えっ?っと声を出していた。
「今は騎士の数が足りないからねぇ♪」
「お兄ちゃんとはどういう関係なんですか?」
「零とはー。ベルリクにいたときからの知り合いー。」
「そんな長い付き合いなんだ?」
「そだよー」
相変わらずポップキャンディを口に含みながら彼は僕達の前を歩いていく。
森を進んでいくと、通常しない臭いが漂ってきた。
「臭い…なんでこんな血生臭いんだ…」
皇紀が手の甲を鼻に押しあて、臭いに顔をしかめている。
「へへっ、妖魔の血かなー?それとも、人?」
「…誰かそこにいる。」
僕は口元に人差し指を立てて静かにさせるようにした。
聴覚がいいミラ族の僕だから聞こえる、小さな息遣い。
それは、妖魔ではなく人のようだった。