「…零」

私は思わず、零を呼ぶ。

「なに?」

明らかに不機嫌で、ピリピリとしている。

いつもの優しい彼ではなくて、何かに怒りを表している。

「薫のことなんだけど…薫は、道化とは思えなっ」

零は私の前まで来ると、彼の胸板に頭を押し付けられる。


「それ以上何か言うな」

零は私の頭を優しく撫でてそっと離れた。

その一つ一つの行動にいつもならドキドキするけど、今日はそんな風には思えなかった。

「アリア…思っても、口に出すな。もし、お前がそれを言い切ったとき、俺はお前を国に差し出さなければならない…」

零は零なりに何か思いがあるのだけれど、彼の立場がそれを邪魔している。

「アリア。行くぞ」

「…うん。」

彼の後ろをそっと歩く。
彼の背中は大きくて、彼の後ろにいれば何も恐れることはない。

だから思わず、涙が出てしまう。


「アリア、泣くな。」


「…」


涙が止まらない私を見て零は足を止めて、再び、私の体を包み込むように抱きしめた。

「なんでこんなことになってしまったんだろう」

ボソッと零が呟いた言葉は…周りの空気にかき乱され…消えていった。

「ねぇ…私たちどうなってしまうのかしら」

「…」

「私、嫌よ!皆がバラバラになっていくなんて!!!」

彼の腕に力が入るのがわかる。

「アリア。俺は、お前から離れないから。絶対離れないから。…アリアも俺から離れるな」

顔をゆっくりと上げると彼は複雑そうな表情を浮かべていた。

何故そんなに不安そうな表情で私を見るの?
私は貴方のそばから離れない。絶対に。


私はずっと…ずっと貴方のことを愛しているのだから。




「離れるわけないわ」




貴方も私から離れないで_____