「…ははっ…まさか本当に…」

別れがいつくるかわからない。

ベネッタの言葉が頭に響く。

こんなにも早く。

「清、あのさ」

顔を上げると皇紀が複雑そうに俺を見下ろしていた。


「…なに?」

正直今は誰とも話したくなかった。
その気持ちが態度へとあらわれている。
皇紀は俺の前にしゃがみ、目線を同じにする。

「多分薫と最後に言葉を交わしたのは、俺だと思う」

「…」

「その時の薫はいつもと違ったような気がする。呼びかけてもぼーっとしているし、言葉にも覇気がなかった。様子がおかしかった」


皇紀は自分の髪をくしゃっと掴むと、ため息をひとつ。

「…多分薫は本当に攫われた気がする。」


「なんでそう思う?」

「…去り際の薫の一言がどう考えてもおかしいんだ。薫は別れ際に”皆のことは信じる”って言ったんだ。これっておかしいだろ?敵だったらこんなセリフ言わないと思うし」

「皆のことは信じる?どういうことだ…?」

「それは俺もわからない」

皇紀は眉を下げ、困ったようにいう。

「薫はっ…攫われ…た…の?」

涙目で水希は言う。

「わからない。でもそうであって欲しいね。」

皇紀の言葉に涙を我慢していた水希はとうとうその大きな目からボロボロと涙を落とした。

「早く薫を見つけてあげないと…薫が殺されちゃうっ…かも」

「物騒なことを涙流しながら言うなよ…」

俺は、水希を引き寄せて、袖で涙を拭った。

「でも本当に攫われたのであれば…その可能性もあるよ」

真実を明かしたために、信じていたものに見放され…
誰にも助けを求めることは出来ずに彼女は死んで行くのか?

そんなもの。間違っている。

「…早く、薫を助けないと…」

気づいたらそう呟いていた。
今の言葉を兵士に聞かれていたら俺の命はないだろうな。

「僕っ…も、のった」

嗚咽しながらも、小さく俺にそういう水希。

「俺も」

皇紀もまた、俺の意見に賛同してくれた。



俺達は、最後まで薫の味方でいよう。
最後の最後まで…

薫自身から道化だということを聞くまで。




なぁ、薫



まだ、俺はお前に何も言ってない。





伝えてない。





「零たちより早く…見つけてやる」