任務から戻ると、昨日薫と別れたロビーで零が俺の帰りを待ち構えていた。

「皇紀、会議室に集まれ」

その言葉のあとくるりと向きを変えて会議室にむかって歩き出す。

俺よりもはるかに高い零の背中の後を追う。水希もいつもこんな感じで零の背中を眺めているんだろうな。

「どうかしたの?」

移動してる間、そう零に質問をしても、零は何も言わなかった。

会議室に入ると、騎士の皆が揃っていて、皆も何故集まっているのかわかっていないようだった。

でも道化について何かあったのだろうと予想しているようで、表情は険しかった。

「全員集まったな。」

「ちょっと待って。薫がいない」

清が立ち上がり周りを見渡しながら言う。

「そういや薫は昨日から見かけないわね」

今度は、マリアが声を出す。

零は静かに首をふった。

「薫のことで集まってもらったんだ。」

「は?」

思わず声が出てしまった。


「古都薫は道化と判明。指名手配とする。即座に見つけ、生死は問わず王家に献上すること」

道化?


時が止まったかのように皆は口を開かなかった。

「零、なんの冗談?」

アリアが責めるように零に言うと、零は冗談ではないというように首を横に振った。

「あいつは道化だったようだ。城内にいるところ、道化の仲間が妖獣に乗って、薫を連れて行ったようだ。」

「なんで薫が城内にいたの?」

「俺も詳しいことは知らないが、どうやら沙羅のことについて諮問会議をしてた時に、自分はシン族だと言って正体を明らかにさせたようだ。」

薫がシン族?コルディアの人間じゃないの?


「ちょっと待ってよ。薫がシン族だったのが本当のことだとしても、薫は道化なの?連れ去られただけかもしれないわ!!!」

今度はマリアが質問する。

「言葉通りだ…薫は道化ではないと言い張っているが…シン族と道化は繋がりがあるだろうと推測されていた。が、現に城に道化が現れた。これはもう、疑わずにはいられない。」

そんなのおかしいだろ。

「だからと言って、薫は何もしていないし、証拠がないだろ!」

清が零に噛み付くように言うと、零は清の目の前まで移動して、清を見下ろすように言う。

「何かをする前だったとしたら?」

その言葉は、もう零は薫を見放してるように聞こえる。

その言葉を聞いた皆は、何も言えなくなってしまった。

信頼していた沙羅に裏切られた直後だ。
疑心暗鬼になるのもおかしくない。
それに今まではコルディア人として俺たちを騙し続けていた薫だからこそ、余計に疑ってしまう。


「信じたくないだろうが、そういうことだ。わかったら行ってくれ」

「…わかった」

アリアは立ち上がり零とともに会議室を出て行ってしまう。


残された俺たちは納得いかないというように、立ち上がろうとはしなかった。

「薫が裏切り者?そんなわけ…」

水希は目にいっぱいの涙を溜めている。

本当は声をあげて泣きたいのだろう。

清は…ゆっくりと床に落ちていった。


「清?!」

マリアが清の肩を持ち、呼びかける。

「…は?シン族?なんで言ってくれなかった?俺がシン族だからと言ってお前を差別するわけないだろ…」


マリアも涙を浮かべて、清の頭にそっと手を置いて、ぽんぽんと二度叩くと、部屋から出て行く。



会議室は静まり返り、誰も口を開かなかった。

水希は泣くのを我慢しているのか、口を結び何も言わない。

清はというと、手の甲を額に当てて、動かない。
目は閉じて、眉間に皺を寄せている。







こんなの嘘だ




「…皆のことは信じる」


薫は、そう言った。

もし薫が、敵だったのであれば、こんな言葉を残していかないはず。

俺たちのことは信じる?

薫は俺たち以外は信じていない?

俺たちの他に何があるんだ?

一体どういうこと?