「ここまでするなんて…何故なの、お母様…」





ぽつりと呟かれた声は俺の耳に入る。

あれから牢屋に連れて行かれ、

目隠しをされ、手錠はそのまま。
足枷を繋がれ、動けない。


そんな状態だから、俺も何もする気がなくなった。




「…そこに居るのは誰?」

「…初めまして。私フロイラと申します」

そう言って俺の頬に手らしきものがそっと触れる。

「ごめんなさい。」

「何故あなたが謝る?」

「…私の母が王妃だからです」

「王妃…王女様であらせられましたか…ご無礼申し訳ありません。」

「薫様に少しお聞きしたいことがあったのです。」

「何で御座いましょう」

「凛のこと、何故ご存知なのですか?」

「…零司令官と水希騎士に聞きました。」

「何処までご存知です?彼が半分人間ではないのはご存知でしょうか?」

「はい。知っております」

「そうですか…彼らにとって貴女は良き相談相手でしたのね。」

「凛という人間はどんな人だったのですか?」

「凛は…優しい人でした。目つきは悪かったですが、態度は優しくて…あの姿に変えてしまったコルディア人の私でも優しくしてくれました」

その声は、優しくて、ほわほわしていて…まるでその声は…

「…凛のことを慕っていたのですか?」

「あっ…その…」

「冗談ですよ。今のは聞かなかったことにして下さい。」

くすくすと笑うと同じようにくすくすと笑い声が聞こえた。

「ねぇ、薫様…コルディアが嫌いですか?貴方方の國を焼き払ったコルディアは憎いですか?」

「嫌いです。大嫌いです。憎い?憎いに決まっているでしょう。おかげで何万というシン族死んだ…でも。私は騎士の皆、コルディアで出会った様々の人のことは嫌いではありません。むしろ、大好きです。」

「…随分ばっさり答えるのですね」

「もう、死ぬので」

「…もう一つ教えて下さい。貴女は道化なのですか?」

「違います。」

正面から布が擦れる音が聞こえ、ヒールのコツコツという音が聞こえた。

「わかりました。いろいろと質問して申し訳ありません。」

それだけ言うと、姫君は俺から離れて行った。