ジャクソンとマイケル

「おーい、みんな聞いてくれー!」

 この周辺にいるであろう、あらゆる種類の昆虫に聞こえるように大声を上げた。

 それに応えるようにあちこちからガサゴソという音が響きだす。人間の目に見える虫もいれば、見えない虫たちも……。

「ちょっと、おいらに力を貸してくれないか?」

「何のために、お前ごときに力を貸さなくちゃいけないんだ」

 返ってきた答えはつれないものだ。だけど、ここはオイラの話術でどうにか作戦に引き込まなくちゃいけない。

「オイラ、実は人間をアッと驚かせてみたいと思ってるんだ。みんなも、人間には何かしら思うところはあるんじゃないか?」

「まあ、そりゃ文句の一つや二つじゃ収まらないぐらいにな」

 どうやら、この界隈の虫たちのリーダーというものがいるみたいだ。オイラの問いかけにはすべて同じ虫が答えてくれている。

「じゃあ、その人間を少し懲らしめてみたいと思わないか?」

「懲らしめる? そんなこと言ったって、単に集団でわっと襲いかかるだけじゃないのか? そんぐらいなら、オレたちだっていつもやってることだ」

「いやいや、そんな生ぬるいものじゃなくてもっと驚くことだよ」

「そんなの、本当に出来るのか?」

「出来る出来る。人間は、オイラたち虫には知能なんてないと思ってるだろ? それを逆手に取るんだ」

 さっきまで打てば響くように帰ってきていた返事が止った。もしかして、しくじったか?

 そう思ったのは、杞憂に終わったようだ。

「詳しく話してくれ」

 リーダー虫がやっと交渉に応じてくれた。

 これで、どうにかオイラの作戦を敢行することができそうだ。