「まーさか」


「お母さん今、何している?」


「今、風呂だ」


 私は風呂場に行ってみた。


 お父さんったら、完全に幻覚症状に陥ってるかも。


「え!?」


 風呂場の脱衣所に来た私は思わず足を止めた。


 背筋に寒気が走る。


 浴室内に誰かが入っているのだ。


 今丁度、湯舟に入ったところだ。


 家には私とお父さん以外、誰もいないハズ。


 まさか、お母さんが本当に帰って来たの!?


 ♪〜♪、♪〜♪


 中から聞こえて来る鼻歌!


 私はますます、恐怖に震えた。


 鼻歌はお母さんの声なのだ。


「お母さん?」


 私は声をかけた。


 返事がない


 もう一度、呼んでみる。


 すると!


「里枝子?」


 お母さんの声だ!


「う、うん!」


「ごめーん、リンス切らしちゃっているから新しいの持って来てー!」